芦北サテライトオフィス田浦には、地元・田浦出身の緩和ケア認定看護師、矢野昌子さんが管理者を務める「ももの木訪問看護ステーション」が入居しています。矢野さんとスタッフの倉本美帆さんに話を聞きました。
Q:どんなお仕事ですか。
A:矢野さん:介護が必要な高齢者、癌などを患って在宅療養している方などの自宅を看護師が訪問し、病状の観察をしたり、食事や体を清潔にするお世話をしたりしています。人生の最期を迎える時の「看取り」も、すでに6件させていただきました。また、24時間、緊急電話で相談を受け付ける体制も作っていて、主に私が担当していますが、「すぐに電話に出てくれるね」と言われます(笑)。
Q:ステーションは昨年(2022年)秋に設立し、本格的に稼働を始めたのは今年2月とのことですね。
A:矢野さん:地元出身ですが、看護師になってすぐに関西の病院に就職し、そして結婚し、関西での生活が長くなりました。しかし数年前、父が癌で療養生活をしている時、仕事もあってなかなか地元に戻ってくることができず、父の最期の日々に寄り添うことができませんでした。緩和ケアをしてあげられなかったのです。その後悔が強く、また、一人になった母が心配になったこともあり、昨年春、夫には迷惑をかけてしまうのですが、私一人だけで「芦北に戻ります」と。受け入れてくれた夫には本当に感謝しています。同時に、芦北では自分のスキルをもっと活かした仕事をしたい、と考えていました。
Q:それが訪問看護ステーションだったわけですね。
A:矢野さん::元々、子育てをする過程で、病院勤務そのもとは違う仕事のやり方として訪問看護を知りました。次から次へ仕事がある病院勤務では、患者さん一人ひとりの話をじっくり聞いてあげることはなかなかできません。けれども、訪問看護では1時間でも話をじっくり聞いてあげることができます。私自身、同じ看護の仕事でも、訪問看護の方がすごく満足感があり、「自分に合っているな」と思いました。

職場の様子(芦北サテライトオフィス田浦)
Q:サテライトオフィス田浦はどうして知ったのですか?
A:矢野さん:訪問看護ステーションを自分で立ち上げようとは思ったものの、どこで立ち上げようかと考えあぐねている時、たまたま車で国道沿いのこの場所の前を通りがかった時「サテライトオフィス募集」の看板を見ました。すぐに役場に電話して「入居できますか」と。それで即、決めました。
Q:入居したことで利点はありましたか?
A:矢野さん:このオフィスは、1階が芦北町役場田浦支所になっています。開業のあいさつで地域を回ったり、新しい利用者さんを開拓したりする際にも、「役場の2階にある」ということでとても信用してもらえました。IT関連企業が入居する時は、設備投資や家賃などの補助制度もあるそうです。場所的にも、高速(利用料無料の南九州道)のインターもすぐ近いし、絶好ですね。ここを中心拠点にして、対象エリアをすでに南の水俣市方面に広げているのですが、スタッフが増えてきた今からは北側に隣接する八代市にも対象エリアを広げたいと考えています。

1階 芦北町役場 田浦支所に設置されている案内
Q:倉本さんはこの夏に入社したばかりと。?
A:倉本さん:私も田浦出身ですが、隣の八代市で育ちました。子育てをしながら仕事をする中でヘルパー2級、看護師の資格を取り、病院や福祉施設で働いていました。そんな中で私も訪問看護に興味があり、ハロワークで「ももの木」の求人票を見て知っていました。3カ月の研修があり、しかも手取り足取り教えてもらえる、土日祝日は完全休み、子どもがいても働きやすいなど、条件面でとても惹かれていましたが、なかなか飛び込めないでいました。けれども、利用者さんや知人たちから「良い事業所らしいよ」という話をたびたび聞き、お世話になることにしました。
Q:関西のノリで、明るく元気な矢野さんを見ていてどうですか?
A:倉本さん:常に褒めながら人を育てよう、としてくれているのが分かります。スキルの部分では、矢野さんの「多少のことは(介護している)家族で何とかできるようになってもらうためには、どんな関わり方をしたらよいかを考えながらやっている」という言葉が心に残っています。そういうふうに自分のスタッフだけでなく、利用者の家族も含めて、介護の質を上げようとしている。この環境で私自身、成長できるなぁと感じています。

向かって右から、代表の矢野さん、スタッフの野口さん、倉本さん
Q:今後、サテライトオフィス田浦をどう使っていこうと考えていますか?
A:矢野さん:もっといろいろな業種が入居してくれたら、サテライトオフィス内でのコミュニケーションが活発になって、その中で地域に貢献できる何か新しいアイデアが生まれると思います。私たちのような地元の人間にとっても、それはとてもうれしいことです。