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移住先レポート

子どもが小学校に入学するタイミングで芦北町に移住

芦北町の特産物のひとつである御立岬温泉で作る塩「岬の御塩」を作っている入江和昭さん

芦北町には、珍しい特産物がある。海に近い「御立岬温泉」の源泉に含まれる「温泉塩」。
町は2013年、温泉センター近くに「塩(えん)むすび館」を建設して本格的に製塩事業に乗り出し、温泉水100%の無添加で成分調整もしていない「岬の御塩」として売り出した。

これが地味にヒット。せんべいやソフトクリーム、ラスクなどさまざまな商品に使われるようになった……と、前置きが長くなりました。実は、町を代表するこの特産物を今まさに作っているのが、滋賀県東近江市から移り住んだこの人――。

芦北町は妻の実家で移住を期に三世代同居がスタート

高校まで東近江で過ごした後、埼玉県内の大学に進学して東京圏で生活。就職は地元・東近江にUターンした。JAで10年以上、窓口業務や集金などを担当していた。そんな時、芦北町の海岸部出身で看護師をしていた女性が、たまたま東近江市内の病院に派遣されていて知り合った。
そして、結婚前の挨拶などで初めて熊本県に足を踏み入れることになった。さらに芦北町まで来て感じたのは、「海が近い」ということだった。内陸の滋賀県は、琵琶湖はあるものの、海はない。目の前に海があることは、とても新鮮だった。

妻郁美さんの実家の世話などがあって芦北への移住を考え始めた時、まず悩んだのは「いつ移住するか」だった。いろいろと考えた結果、一番上の子どもが小学校に入学するタイミングを選択。「途中で転校するよりも、子どもがスムーズに学校生活に入れることが大事だろうと思いました」と振り返る。住居についても、「実家があるのだから、新築や賃貸などにお金を使う必要はない」と、三世代同居に決めた。
こうして2016年3月、移住した。

はじめは八代市内のビジネスホテルに就職しました

仕事は、ハローワークの紹介で八代市内のビジネスホテルに就職。約2年勤めたが、通勤に車で40分近くかかったことから、「もっと地元で仕事がないか」と、改めてハローワークで探した。求人の多くは介護職だったが、たまたま見つけたのが温泉センターを含む「御立岬公園」を運営している今の会社だった。当初は物販や温泉センターなどを担当していたが、昨年から「温泉塩」の担当になった。

地下約1000㍍からくみ上げた温泉水を、温泉センターのボイラー排熱を利用して煮詰める。濃縮された温泉水をろ過して不純物を取り除く。いったんポリタンクに入れて、塩むすび館に運ぶ。ここで最終的に数時間加熱して乾燥させる。広さ約200平方㍍の塩田や浅い木箱を使い、昔ながらの天日干しもしている。この天日干しは数カ月かかるという。

最後に、ごく小さなゴミなどが混じっていないか検品し、袋詰めして完成。「検品作業が最も大変」という。こうした一連の工程をもう一人の担当者と交代でやりつつ、出来上がった「岬の御塩」を連日、各所に配達して回っている。

芦北町の魚のおいしさは格別です

移住してきた当初、まず困ったのは、言葉の違いだった。「今でも、相手が何を言っているのか分からないことがある」と笑う。もう1点は、知り合いがいないこと。「分かっていたこととはいえ、やはり寂しさはありました。年に1、2回は東近江に里帰りしますが、すぐに友人らと会いますね」。

ただ最近は、小学5年生を筆頭にした3人の子どもの友だちたちと一緒にバーベキューをするなど、子どもを通じた関係の輪も広がっている。
一方で、楽しみは豊富な海の幸。「魚のおいしさは格別ですね」と目元が緩む。「魚釣りにはなかなか行けませんが、船の免許は取りたいです」。

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